今回は、ある女性と亡くなった息子さんのお話をしたいと思います。
その女性、仮にDさんとします、は母子家庭でしたが、不幸なことに不慮の事故で息子さんを亡くしてしまいました。
あまりにも突然だっため、それまでの親子の関係を考えると、十分に息子の気持ちを汲んでやることができなかったと思い、後悔の日々を送っていました。
そのため、息子さんが現在あの世に行っても元気にしているか、またあの世から何か伝えたいことはないのか、自分のことをどう思っているのかを知りたいという相談で私たちのところへお越しになられました。
亡くなった方のお気持ちをお聞きする場合、故人の好きだった食べ物や飲み物をお供えし、御霊祭という神式の祭式を執り行って、故人のお気持ちを慰めます。そして、その時々で故人のお気持ちを皆さまにお伝えします。
当日、Dさんは、
「息子はステーキが大好きだったものですから、家で焼いて持ってきました」
と焼いたステーキを弁当箱に入れて持って来られました。その他にもいろいろとお供えして祭式を始めました。中盤になった頃、私のところに亡くなった息子さんが、
「お母さん、僕の大好きなものがまだないからすぐにお供えして欲しい」
と訴えて出てきました。大好きな物がないって息子さんがおっしゃっていますよとDさんにお伝えすると、
「あれ?息子の好きな物は全部お供えしているはずだけど・・・」
と首を傾げられて思いつかないようでしたので、私からあらためて何が欲しいのか息子さんに聞くと、
「コーラが大好きなのにお供え物にコーラがない、あの世にはコーラがないからコーラが飲みたいなぁ」
と返ってきました。
Dさんにそのことをお伝えすると、
「あっ!確かに生前、息子はコーラが大好きで、いつもいつも飲んでいました!!」
とおっしゃって、いますぐに近くのコンビニでコーラを買ってきますと言い、コーラを買ってきてお供えしました。
その後、祭式は順調に進み、最後に息子さんの御霊をあの世に送るときでした。息子さんが、
「まさかあの世でもコーラが飲めるとは思いませんでした。とても満足しました。私はあの世で元気に過ごしています。お母さんも自分を責めずに自分の人生を歩んでください。」
というメッセージを残して、あの世に帰っていきました。
Dさんは、息子の気持ちを聞けて、また小さなことだけれども息子の望みを叶えてあげることが出来て本当に良かったとおっしゃって帰って行かれました。
人はあの世に行っても、生前に好きだったことを記憶しています。
しかし、一旦、あの世にいってしまうとこの世のものを手に入れることは一切できません。しかし例外的に、御霊を慰めるときにお供えすることによって、肉体が無い御霊でも曲がりなりにこの世の追体験ができるという不思議な役割を果たすものがお供え物となります。
今回のお話は、故人のささいな思いや願いを叶えてあげることも、また重要な御霊慰めであるとひしひしと感じた出来事でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(終わり)

