今回、熊野古道の発心門王子から本宮大社まで約7キロを歩くルートをたどりました。
宿泊した川湯温泉川湯みどりやさんが送迎サービスを行っているのでそれを利用します。朝8時にホテルを出発しました。送迎車で約20分、スタート地点の発心門王子に到着します。
発心門王子の名前の由来は、かつてそこには大きな鳥居があって「鳥居をくぐる事で、仏道に帰依する心が芽生える」という意味から「発心門」と呼ばれたそうです。
王子社とは熊野権現の御子神を祭った神社のことで、目的地の本宮大社への道しるべの役割があり、格式高い五体王子が猪鼻王子、発心門王子、水呑王子、伏拝王子、祓殿王子の順であります。
発心門王子から緩やかな舗装道路を下っていきます。
分岐点から細い道に入っていきます。
次の水呑王子まで約1.7キロの道のりとなります。日曜日ですが、1組団体の方とあと数人ぐらいがいるぐらいでとても静かです。
日本の山里の風景を眺めがら歩いていくと、水呑王子が見えてきました。
発心門王子から約30分ぐらいで水呑王子に到着しました。基本的に下りが多いのでそれほど負担にはなりません。
水呑王子には、腰痛を治してくれるという「腰痛地蔵」があります。
実は、一週間ほど前にスタッフの1名が突然腰痛を発症してそれ以来歩くのもままならない状態でした。
病院に行っても治らず、ずっと寝込んでいましたので、私が腰痛地蔵さまの前でお賽銭をあげて代わりに祈念しました。その後、驚くべき結果があったので次回お話しをさせていただきます。
水呑王子を過ぎて薄暗い森の中に入っていきます。
しばらくすると村落に抜けます。朴訥とした昔の日本の風景をそのまま見ているかのようです。
ここは、「ほんまもん」というNHK朝の連続ドラマの設定で主人公の出身地だった村だそうです。
この村落を過ぎると、次の伏拝王子に到着します。水呑王子から距離は約1.9キロ、時間は40分くらいでしょうか。眺めが素晴らしいところを歩くので気候に恵まれるととても気持ちがいいと思います。
伏拝王子へと続く登り道を上がれば到着です。
伏拝王子の名前は、昔人々は苦労重ね古道を踏破して眼下緩やかな熊野川と音無川の出合う森のなかに熊野本宮大社を初めて目にしたときに、感激のあまりにひれ伏して拝んだからということで伏拝王子と名付けられたそうです。
昔の人々にとってこの熊野詣がどれだけ過酷な旅でだったか分かります。伏拝王子は、平安時代の女流歌人、和泉式部の伝説が残っている場所でもあります。
興味のある方は、わかやま観光情報のHPをご覧ください。
https://www.wakayama-kanko.or.jp/kataribe/03/detail_04.html
和泉式部のお話の真偽はさだかではないですが、古来より熊野の神々は浄不浄を問わずあらゆるこの世のものごとを受け入れる神様として慕われたことをを物語っています。
そのような神々は国津神と呼ばれて人々と密接な関係にありました。
わたくしどもの神様も自ら国津神であるとおっしゃっていますので、決して高見に立たず常に人々と共に歩むお姿が共通していると感じます。
ここで失態を犯してしまったのですが、伏拝王子は古道からちょっと中に入った丘の上だったので(写真の左上)、このときまったく気付かずに通り過ぎてしまいました。だいぶ行ってから気づいたので戻るのは諦め、そのまま進みました。
しばらく進むと、昔、関所があった三軒茶屋跡という場所に出ます。昔は、関所で通行手形と通行料を支払ったそうです。
関所を越えると、昔ながらのでこぼことした石畳みの古道が現れます。かなりでこぼこしているので、油断すると足をくじきそうになります。
途中、よりみち展望台があります。そこからは大斎原の大鳥居が眼下に広がります。よくパンフレットで見かける景色ですので、ぜひ立ち寄りをお勧めします。
石畳みの古道を下っていくと、祓殿団地という住宅街に出ますので、それを抜けると祓殿王子に到着します。伏拝王子から約3キロ、1時間ほどです。本宮は目の前です。このとき雅楽の音色が遠くから聞こえてきてとても風流でした。
祓殿王子は、長かった道中の塵や埃を払い、身なりを整えて熊野本宮大社へ参拝する「禊の場」でした。
昔の人々はここで旅装を解き、身を清めて本宮に参拝しました。
熊野本宮大社の鳥居があります。これは裏手の鳥居なので素朴なつくりの鳥居です。
境内の中に入っていくと、雅楽の音がよりはっきりと聞こえてきて木苗祭という例祭を行っていました。
たまたま偶然にこのような例祭を見れたのは幸運です。
20人ほどの列席者のなかには、昨晩宿泊の案内や朝には熊野古道の説明をして見送っていただいた川湯温泉川湯みどりやの総括支配人の方もいらっしゃしました。
熊野本宮大社から10分ほど歩いたところに、明治初めごろまで熊野本宮大社があった大斎原というところがあります。よりみち展望台から見えた大鳥居があります。もしお時間があれば立ち寄ると昔の本宮大社の雰囲気をうかがい知ることができます。
まとめ
発心門王子から大本宮までの7キロでしたが、景色の変化も富んでとても良い古道でした。
また、日曜日にもかかわらず人が少なく、古き良き日本の原風景のなかを歩くと、現代人とは比較にならないほど信仰心篤かった昔の人々が苦労を重ねて本宮をお参りしたときの光景が目に浮かびます。
わずか7キロでは当時の人々の苦労のひとかけらも味わっていないかもしれませんが、当時の人々の神様への真摯たる思いにただただ頭が下がるのみです。
腰痛地蔵さまのところで不思議な後日談がありましたので、次回ご紹介させていただきます。
ご覧いただきありがとうございました。